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by PFart

現代アート/島袋道浩展:美術の星の人へ

『島袋道浩展:美術の星の人へ』
2008.12.12-2009.3.15(訪れた日:12.30)
ワタリウム美術館
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会田さんに通ずる・・・

昨年の秋頃、東京都現代美術館の常設展で島袋さんの映像(生きたタコを水槽に入れて、新幹線で東京まで運ぶというもの)をみて、そのゆるい発想に脱力するとともに、なぜにタコ?!と衝撃を受けたことを覚えている。

また、確か『美術手帖』の会田誠特集だったと思うけど、島袋さんから会田さんに向けてのメッセージが掲載されていた。会田さんへの愛が文面から滲み出ていて、2人には何か通ずるものがあるんだなあと思った。今回の展示を見て、凡人の常識からは完全にはみ出た感覚と、ふと笑ってしまうようなユーモアという点で、島袋作品は、たしかに会田さんの作品と通ずるものがあった。(ちなみに12/13に会田さんとの対談イベントが同館であったらしく、参加できなかったことが悔やまれる。)



フィッシュ・アンド・チップス

前置きが長くなってしまったが、今回の展示でもっとも良かったのは、海のなかでジャガイモが漂う映像「シマブクのフィッシュ・アンド・チップス」。イギリスに住んでいたこともある島袋さんは、町中でフィッシュ・アンド・チップスを見掛けるたびに「美しい詩があふれている」と思ったという。この食べ物が発する「魚とイモの出会い」つまり、「海と大地の出会い」というメッセージ(?)に着目し、心動かされた島袋さんは、とうとうこの映像を作った。

くだらない発想? たしかに、イモが海を漂う映像、と一言で言ってしまうと「くだらねぇ」と思うかもしれない。しかし、照明を落とした白い部屋に、いい感じの音楽(ブラジル人ミュージシャンが制作)が流れ、大画面のスクリーンには海中の映像が静かに流れている。くだらないどころか、一種のヒーリング効果すらある。わざとか、技術的な問題かは不明だが、映像は大変荒い。それがかえって抽象的なイメージを生み出しており、見る人々に色々なことを想像する余地を残す。時々ジャガイモが、大宇宙に浮かぶ惑星のように見えてしまった。


コミュニケーションをテーマに

「詩的で、ユーモアあふれる作品は、コミュニケーションの新しい可能性を示唆すると同時に、人間がより豊かに生きて行くための新しい価値観を提案します」(ワタリウムの展示チラシより)

異文化間コミュニケーション、異なる分野に属するものの出会いをテーマに、ユーモアを交えることで、誰もが難しいことを考えず、楽しく参加できるという島袋さんの作品。たとえば日本と韓国の間の海でとれる太刀魚をもって韓国に赴き、ビルの屋上から太刀魚をキラキラ輝かせ韓国の人々に挨拶するという映像作品“アートソンジェ山の夜明け”。最後にみんなで食すシーンもあり、何だかほのぼのしている。

また、今回の展示のために制作されたアーティストブックが3冊ある。これはそれぞれ、ワタリウム美術館の周辺にいるトラックの八百屋さんやビッグイシューの販売員さんから購入しなければならない。ビッグイシューとは、ホームレスの方々が路上で販売している300円の情報誌だ。私も、新宿駅西口で売ってる人を見たことはあるが、話しかけて買うには少々勇気が足りなかった。今回は、どうしても欲しくなって、美術館の帰りに販売員さんがいるらしいという場所まで胃を決して直行。

しかし、先客がいた。若いカップルでずいぶん販売員さんと話し込んでいる。ちょっと距離を置いて待った。彼らも美術館帰りかどうか分からないけど、販売員さんもあれこれ商品を取り出し、熱心に話をしている様子だった。これぞ島袋さんの提案する異文化コミュニケーションなのか。

しかしまあ、長い長い、話が。5分あるいは10分くらい待ったかもしれない。「販売員さんと、柱の陰から彼を待ち続ける女」。この図に苦笑しつつ、さらには手足が冷たくなって笑えなくなったところで退散した。


青山に象

ワタリウムの屋上にはじめてあがった。18時頃であたりはすでに暗く、西の空に下弦の月と、ひときわ光る星が見えた。そして隣のビル屋上には島袋さんの「象」が。幻想的な光景だった。
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☆島袋道浩さんの個展オープニングスピーチ(2008.12.12)がテキストで読めますhttp://www.watarium.co.jp/exhibition/0811shimabuku/index.html#ev
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by PFart | 2009-01-05 14:16 | ART/現代アート展